週刊金融財政事情(2021年8月17日号)『海外に学ぶ ポストコロナの銀行モデル』への書評投稿

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週刊金融財政事情(2021年8月17日号)『海外に学ぶ ポストコロナの銀行モデル』に書評を投稿しました。

書評内容

 待望の書である。本書は昨年、週刊金融財政事情に連載された記事に大幅な加筆をしたものだ。著者は、インスティテューショナルインベスターズ誌の邦銀株アナリストランキングで第1位を6回、日経ランキングで第1位を5回取得するなど、これまでも邦銀経営に関して優れた著書を残し、注目を浴びてきた。
 本書の最大の特徴は、ノルウェーのDNBをはじめ海外の特徴ある有力銀行を丁寧に取り上げながら、比較的新しい銀行の概念である「チャレンジャーバンク」を詳細に分析するなど、斬新な切り口で真にグローバルな銀行像を個々に明らかにしたことである。同時に苦境にある邦銀に、新しいビジネスモデルの視点を提供しようとしている。銀行アナリストである著者の、邦銀に対する温かい目線を感じるのは私だけではないと思う。
 次なる特徴は、海外の銀行を取り上げる際のトピックごとのユニークな視点である。DXに長じるDNB、ビジネスモデルの成功例としてのシンガポールのDBS、リーマンショック以降、世界最大の銀行統合を果たした米国のトゥルイスト、組織への愛着から生まれる業績への能動的貢献姿勢を指す「従業員エンゲージメント」を重んじるU.S.バンコープ、チャレンジャーバンクの収益構造等、どの例をとっても示唆に富む。
 他方、課題もある。全編を通して著者の鋭敏かつ深い洞察力が見られるものの、実際に邦銀が著者の知見をどう生かすことができるのか、残念ながらその筋道が定かではない。ただ、そこまで本書に要求するのは求め過ぎであり、将来の著書に委ねたいと思う。
 本書は邦銀関係者にとって必読の書であり、本書をヒントとして各金融機関の皆さんが新しい銀行モデルを構築されることを切に願うものである。
(日本大学大学院 特任教授 階戸照雄)

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